マサンインベストメントグループ[MSN](Masan Group)はこのほど、国内の飲料市場開拓強化を目指して、社内に飲料部門「マサン・ビバレッジ」を立ち上げた。MSNの今後の強力な市場開拓戦略により、国内の飲料市場における競争が一層熾烈化すると予想されている。
この新部門には、米飲料大手ペプシコのベトナム現地法人で副社長を務めていたレー・チュン・タイン氏を部長として迎え入れた。タイン氏はペプシコでマーケティングを担当し、果汁飲料「スティング(Sting)」やボトルウォーター「アクアフィナ(Aquafina)」、スナック菓子「ポカ(Poca)」などの新製品を開発し、ペプシコに大きく貢献した人物。同社はこのほかにも、飲料部門に関する経験豊富な人材を集めているという。
ベトナムの飲料市場は、消費財分野で活動している大手企業だけでなく、同分野以外の企業の関心も大きく集めている。現在、飲料大手各社が投資を強化しており、MSNのような後発組は苦戦を強いられることが予想される。茶飲料の地場最大手、タンヒエップファット社は2012年に、クアンナム省及びハナム省で新工場2か所の建設を開始した。スイス系ネスレの子会社ネスレ・ベトナムは2012年末、1200万ドル(約12億6000万円)を投じてボトルウォーター「ラヴィ(La Vie)」の生産ラインを増設している。また、飲料市場に参入している異業種からの企業として、東南部ドンナイ省で銅線を生産しているゴーハン社などが挙げられる。
このような熾烈な競争の中で、果たしてMSNが飲料市場でシェアを獲得できるのか疑問視する声もある。これに対して、MSNが現在、子会社のビナカフェ・ビエンホア[VCF](Vinacafe Bien Hoa)を運営していることや国内で最も歴史のあるボトルウォーター生産会社ビンハオ(Vinh Hao)の株式63.5%を保有していることから、今後の更なる発展戦略により、飲料市場でMSNがシェアを拡大していく可能性はあるとの意見も上がっている。
MSNは、VCFの既存コーヒーの改良、新製品の更なる開発を推し進めると共に、ビンハオでは非アルコール飲料の開発に注力する方針だ。更に、商品の多様化を目指してこの2社とは別の新ブランドや新製品を開発するとしており、情報筋によると、MSNは今後アルコール飲料部門も立ち上げるという。
なお、英国の市場調査会社ユーロモニター・インターナショナル(EIM)発表のデータによると、2012年におけるベトナム飲料市場の規模は約54兆ドン(約2700億円)で、年平均成長率(CARG)は+22%に上っている。また、2007年~2012年におけるボトル入り茶飲料市場の売上高は年平均成長率(CARG)+48.2%の高い水準を維持している。