建設省が発表した2022年10~12月と同年通年の不動産市場に関する報告によると、同年に新たに認可された不動産案件は前年比で減少し、住宅の供給量も減少した。特に、低所得者向け住宅の供給量が少なかった。
2022年10~12月に全国で認可されたのは22案件の5995戸で、前年同期の45%に留まった。このうち、ハノイ市とホーチミン市の2大都市で認可された案件数はわずか6案件だった。
2022年通年に全国で認可されたのは前年の53%に相当する126案件の5万5732戸だった。同年末時点で建設中だったのは466案件の22万8029戸で、前年末時点の48%、また同年内に竣工したのは91案件の1万8206戸で、前年の55%だった。
2022年10~12月におけるマンションの取引価格は前期と変わらなかった。市況が軟調だったため、デベロッパー各社は販売促進に努めた。ハノイ市とホーチミン市では、1m2当たりの販売価格が2500万VND(約13万8000円)未満の物件は極端に少なく、こうした物件は主に市の中心部から離れた地域に立地している。また、発売された物件は中級のものが大半だった。
土地付き分譲住宅と分譲地も、2022年10~12月の取引価格は前期と変わらなかった。ただし、地域によっては一部の案件で取引価格が下落する傾向が見られた。
一方、工業団地用地など工業不動産の市況は堅調だった。全国の工業団地における平均入居率は80%以上に達し、賃貸料も前年比+10%上昇した。工業団地用地の1m2あたりの平均賃貸料は100~120USD(約1万3000~1万5600円)となり、特に南部では供給が限られたため、賃貸料が高かった。
2022年通年に全国で合わせて78万5637件の不動産取引が成立した。このうち、マンション・土地付き分譲住宅の取引成立件数は15万4756件、分譲地の取引成立件数は63万0881件だった。2大都市の取引成立件数は、ホーチミン市が1万0780件、ハノイ市が7662件だった。
2022年は、多くの不動産会社が事業再編や工事の一時停止、規模縮小、労働者削減を余儀なくされ、中には労働者の数を▲50%削減した大手デベロッパーもある。
同年に新規設立された不動産会社の数は前年比+14%増の8593社、事業を再開したのは同+57%増の2081社だった。また、破産または解散を申請した不動産会社の数は同+39%増加した。
この背景として、管轄当局の指示に従い商業銀行が不動産向け融資を抑制し、デベロッパーが発行体となる社債の発行に対する取り締まりも強化されたため、デベロッパーと物件購入者の資金借り入れが難航したこと、企業のキャッシュフローが悪化したこと、などが挙げられる。
なお、ベトナム国家銀行(中央銀行)の統計によると、2022年末時点での不動産向け融資額は800兆VND(約4兆4000億円)となっている。一方、ハノイ証券取引所(HNX)の統計によると、2022年12月25日時点における不動産企業の社債発行合計額は419兆VND(約2兆3000億円)となっている。