アジア開発銀行(ADB)は先般発表したレポートの中で、ベトナムの2021年における国内総生産(GDP)成長率予想を、7月に発表した前回レポートの+5.8%から+3.8%(▲2.0%pt)に下方修正した。
ベトナムの1~6月期のGDP成長率は+5.64%で、前年同期の+1.82%から大きく加速したが、4月末から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内第4波の影響により、下半期(7~12月)に入ってから労働力や工業生産が減少し、農業のバリューチェーンにも混乱が生じている模様だ。
労働集約型の製造業が特に大きな影響を受け、人手不足などで生産量も減少している。また、移動制限が引き続き観光業に悪影響を及ぼし、サービス業全体の成長のネックとなっている。
さらに、下半期はベトナムの雨季と重なり台風も多く、新型コロナ対策としてベトナム産の農産物に検疫措置が適用されることから、農産物の輸出に多少の影響が及ぶものと見込まれる。
ADBは、ベトナムが2021年末をめどに第4波を制御し、2022年4~6月までに全国人口のワクチン接種率を70%に引き上げられれば、ベトナム経済は高成長の軌道に回復すると予想している。
このシナリオを想定した場合のベトナムの2022年のGDP成長率予想は+6.5%となっている。
なお、中長期的な成長見通しについてADBは引き続き楽観的な姿勢を示している。内需の回復、公共投資の強化、自由貿易協定によってもたらされる新たな輸出市場の開拓、また、新型コロナ禍をきっかけとするデジタルトランスフォーメーション(DX)事業の加速が成長を牽引していくものと見込まれる。