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ロシアのウクライナ侵攻、ロシアへの制裁がベトナム経済に与える影響 完全無料ニュース

[2022/03/03 08:01 JST更新]


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 ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、ファンド運用大手ドラゴンキャピタル(Dragon Capital)は、欧米諸国によるロシアへの経済制裁がベトナム経済にどのような影響を与えるかを評価するレポートを発表した。

 ドラゴンキャピタルによると、ベトナムと、ロシアおよびウクライナとの間の貿易額はベトナムの貿易額全体のそれぞれ1.0%、0.1%程度に留まっているため、ベトナムの貿易額への影響は限定的とみられる。

 しかし、同2か国は世界のエネルギーとサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしているため、ベトナム経済は多少の影響を避けることはできない。最も明白な影響は、石油価格の上昇によるインフレ圧力だ。消費者物価指数(CPI)の算定に用いる消費財バスケットの構成では、燃料が3.6%、交通が9.7%をそれぞれ占めている。

 ドラゴンキャピタルは、ロシアによるウクライナ侵攻に関連した3つの石油価格シナリオを踏まえ、ベトナムの2022年のインフレ率予測を+3.58~4.18%と予想している。

◇シナリオ1(1バレル当たりの石油価格が105USD=約1万2100円):インフレ率+4.18%
◇シナリオ2(1バレル当たりの石油価格が100USD=約1万1500円):インフレ率+3.80%
◇シナリオ3(1バレル当たりの石油価格が88USD=約1万0100円):インフレ率+3.58%

 石油価格の上昇はベトナムのインフレ率に多少の影響を与えるが、ベトナム政府は石油関連製品に対する環境保護税の引き下げや国家備蓄の放出を行うことで、その影響を抑えることは十分可能だとみられる。

 また、石油価格の上昇が貿易収支にも影響を与えるものと見込まれる。ベトナムは過去4年間で毎年約60億USD(約6900億円)分の石油関連製品を輸入している。

 1バレル当たりの石油価格が85USD(約9800円)となることを想定した場合、ベトナムは132億USD(約1兆5200億円)の黒字を計上し、1バレル当たりの石油価格が100USD(約1万1500円)になった場合、黒字額は120億USD(約1兆3800億円)に縮小すると予想される。

 つまり、ロシアによるウクライナ侵攻がベトナムの貿易活動に与える直接的な影響は限定的だが、ロシアとウクライナは半導体チップの製造において重要な原材料であるニッケルやネオン、クリプトン、アルミニウム、パラジウムなどの世界的な主要サプライヤーとなっているため、ベトナムは特に携帯電話や電子製品の輸出に関して世界的なサプライチェーンの混乱の影響を受ける可能性があるとみられる。

 ベトナムは、ロシアとウクライナからはこれらの原材料を直接輸入していないが、韓国や日本、台湾からチップを輸入している。ベトナムは2021年に590億USD(約6兆7900億円)分の半導体や電子部品を輸入し、輸入額全体の17.6%を占めた。

 これらの国々はロシアに対する経済制裁を支持している。近々、同国に対し複数の措置を適用する可能性があるため、ロシアとこれらの国々の間の緊張はベトナムの携帯電話や電子機器の生産コストにも影響を与える形となる。

 なお、経済制裁の1つとなっている国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの銀行の排除により、ベトナムとロシアの間の決済が難航することは明らかだ。

 しかし、ベトナムでの国際取引はSWIFTだけでなく、ウエスタンユニオン(Western Union)などを介しても行われている。このほか、ベトナムにはロシアへの直接決済ライセンスを持っているベトナム・ロシア合弁銀行(VRB)があり、同行がベトナムとロシアの間の二国間送金サービスを提供しているため、SWIFTからロシアの銀行を排除することで両国間の決済が不可能になることはないという。


  
  
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