4月末から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第4波は、現在も全国で猛威を振るっており、中でも商都ホーチミン市が最も深刻な震源地と化している。この影響により、国内の縫製・繊維メーカーへの新規受注が減少傾向にあり、他国への発注に切り替える動きがみられる。
従業員から感染者が見つかって生産の一時停止を余儀なくされたり、厳格な新型コロナ対策により、工場の稼働が制限されるなどの客観的な事由から、ベトナムのメーカー各社は納期を厳守できない可能性が高まっている。
ホーチミン市では現在、縫製・繊維メーカーを含めた製造企業は、「3つの現場」(◇現場での生産、◇現場での食事、◇現場での休憩・宿泊)と「1つのルート・2つのスポット」(1つのルートのみを通って労働者を宿泊施設から生産現場に輸送する)の体制を確保した場合のみ工場の操業が認められる。
しかし、「3つの現場」と「1つのルート・2つのスポット」の条件を満たすのは簡単なことではない。
ベトタン・ジーンズ(Viet Thang Jean、ホーチミン市)のファム・バン・ベト会長は、「工員全体の3分の1に当たる約3500人分しか居住スペースを確保できず、生産活動に多大な影響が出ている。発注側は我々が通常の生産体制を確保できる場合に限って新規発注するとしているが、現段階ではそれは無理な話だ」と話して天を仰いだ。
今年4月からイタリア系ファッションブランド「テディ(Teddy)」と契約を結んだマイワン・ファッション(MyOne、ホーチミン市)のレ・バン・タム社長も、「新規受注はおろか、締結済みの契約分すらも納期に間に合わせることが難しい」と嘆いた。
ベトナム縫製協会(VITAS)のブー・ドゥック・ザン会頭によると、ベトナム南部では生産の一時停止を余儀なくされている縫製・繊維メーカーが全体の97%に達している。こうした中で、新規発注を他国に奪われるのは当然の流れと言える。
なお、一部の海外発注企業は、国内メーカーに対し、契約代金の支払いを2~6か月延長するよう求めており、応じなければ新規発注を他国に回すとしている。国内メーカーがこの条件をのんだ場合、資金繰りの悪化が懸念され、ジレンマに陥っている状況だ。