外資誘致、堅調な輸出活動、そして在外ベトナム人(越僑や海外派遣労働者など)からの本国送金は揃ってベトナムの総合収支に大きく貢献している。
2023年の海外直接投資(FDI)認可額(推定値)は前年比+32.0%増の366億USDへと大幅に増加した。また、同年の実行額(推定値)は同+3.5%増の232億USDに増加した(計画投資省傘下の海外投資局=FIAデータ)。
また、貿易収支は2016年~2023年に8年連続で黒字を計上し、総合収支に大きく貢献した。中でも、2023の貿易収支は280億USDの黒字で、輸出総額の7.9%に相当し、黒字が続く直近8年間の中でも最高を記録した。
世界情勢の複雑化を背景に景気低迷が続く中、2023年の輸出総額は前年比▲4.4%減の3555億USDへと小幅に減少し、同年の輸入総額も同▲8.9%減の3275億USDに減少した。同年の輸出額の対GDP比率は9割弱に達しており、東南アジア地域で最も輸出依存度の高い国の1つとなっている。
この背景として、政府がFDI誘致や輸出志向工業政策を継続的に推進していることが挙げられる。事実、輸出総額をセクター別でみてみると、外資セクターの輸出額が輸出総額の7割強と圧倒的な割合を占めた。主力輸出製品は、コンピューター・電子製品・部品がトップ、続いて、◇携帯電話・部品、◇機械・設備・部品、◇衣料・織物、◇履物、◇車両・部品、◇木材・木工品などとなっている。
なお、ベトナム最大の輸出先は米国で、輸出総額の約3割を占め、◇中国、◇韓国、◇日本、◇オランダ、◇ドイツなどがその他の主要輸出先となっている。一方、最大の輸入元は中国で、輸入総額の3割を占め、◇韓国、◇日本、◇台湾、◇米国、◇タイなどがその他の主要輸入元となっている。(2023年データ)。
ベトナムの輸出において韓国の財閥企業であるサムスングループの存在感が高く、同社のベトナム事業全体の売上高はベトナムのGDPの2割、輸出額もベトナムの輸出額の2割に寄与している。ベトナム製のサムスンブランドのスマートフォンは世界100か国・地域以上に輸出されており、全世界の同ブランドスマートフォンのうち、半分がベトナムで製造されている。
2023年における在外ベトナム人からの本国送金額は160億USDだったと推定される。2000年から2023年の本国送金額の累積額は1760億USD、年平均額は73億USDと試算される。リーマンショックの影響を受けた2008年と、新型コロナが発生した時期を除き、本国送金額は同期間にほぼ増加の一途を辿った。
この背景には、ベトナムは大量の在外ベトナム人を抱えていることがある。ベトナムでは、第一次インドシナ戦争とベトナム戦争が相次いで発生し、ベトナム戦争後も体制反対や貧困回避のボートピープルなどの海外脱出が1980年後半まで続いたという歴史的な背景があり、米国やオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツなどを中心に世界130か国・地域以上に530万人もの越僑が居住している(2023年1月データ)。また、ベトナム政府は貧困対策の国策として1990年代から海外への労働者派遣を強化しており、海外へ出稼ぎに行くベトナム人の数は65万人に上っている(2023年10月データ)。主な派遣先として、日本や台湾、韓国、中国などが挙げられる。
中央銀行はこれを踏まえ、外貨を継続的に買い入れ、2021年末時点で外貨準備高を史上最高水準となる1094億USDにまで積み上げた。これは、2010年時点の8.8倍、2015年時点の3.9倍に相当した。
しかし、米国での高インフレを背景とした米国連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの実施を受け、中央銀行は国内通貨を安定化させるべく、2022年中にドン買い・米ドル売りの為替介入を継続的に行った。中央銀行によるドン買い・米ドル売りの為替介入によって、2022年末時点の外貨準備高は865億USDに減少したが、2023年には990億USDにまで回復しており、健全な範囲内だとみられている。
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