アジアコマーシャル銀行（ACB）

▼アジアコマーシャル銀行(ACB)：べトナムの大手民間銀行。全国に本店・支店・出張所を385店舗展開、主にホーチミン市を中心とする東南部地方に集中 (2023年6月末)。個人向けリテールおよび民間企業向けサービスに強み。

総合評価：☆☆☆☆　（五段階評価で☆５つが最高、☆１つが最低）

ここに注目

◆2023年の株価収益率(PER)は6.3倍で、割安な水準にあるとみられる。

会社概要

会社名：アジアコマーシャル銀行

英語名：ASIA COMMERCIAL BANK

資本金：38,840,503,580,000 VND

流通株式数：3,884,050,358 株 (2023年8月3日現在)

証券コード：ACB

上場証券取引所：ホーチミン証券取引所(2020年12月9日にハノイ証券取引所＜2006年11月21日＞から鞍替え上場)

沿革

　1993年設立。政府が民間銀行設立を認めた初期に設立された銀行の一行。

I. 株主構成

5％以上を保有する株主(2023年8月4日現在)

株主	保有株式数	保有率
国内株主	2,718,835,251	70.00%
海外株主	1,165,215,107	30.00%
＋チュオン・ゴック・フオン女史が代表する海外株主グループ	313,189,746	8.06%
＋Whistler Investments Limited	193,907,187	4.99%
＋Sather Gate Investments Limited	193,907,187	4.99%
合計	3,884,050,358	100.00%

(※)外国人保有枠：30.0％

II. 事業内容

定期預金・普通預金・譲渡性預金による短中長期資金の調達、調達資金の融資、コマーシャルペーパー・社債・有価証券の割引、法律に基づく共同出資・合弁、金融投資、顧客間の決済サービス、外国為替・金銀の取り扱い、国際決済サービス、外国からの資金調達、ファクタリング等。

◎ベトナムの大手民間銀行。2006年11月にハノイ証券取引所(HNX)に上場、2020年12月にホーチミン証券取引所(HSX)に鞍替え上場した。

◎強みは個人向けリテールサービスおよび民間企業向けサービス。

◎創業以来業績拡大を続け、提供サービスの種類も豊富な国内大手民間銀行として確固たる地位を築くに至ったが、2012年の経営幹部逮捕事件で顧客からの信頼に傷が付いたため、それ以降は事業再編を積極的に行い、不良債権の処理に注力していた。2018年に事業再編が完了し、安定軌道に入っている。

◎バンカシュアランス(銀行窓口での保険販売)事業では、2015年11月からAIA、2019年9月からマニュライフ(Manulife)、2019年12月からFWDベトナム生命保険(FWD Vietnam Life Insurance)とそれぞれ事業提携。2020年11月、カナダ系生命保険会社のサンライフ・ベトナム・インシュアランス(サンライフ・ベトナム＝Sun Life Vietnam)との間で15年間の独占的バンカシュアランス契約を締結している。

◎全国に本店・支店・出張所を385店舗展開し、主にホーチミン市を中心とする東南部地方、ハノイ市に集中 (2023年6月末)。

III. 業績推移及び業績見通し

	2023年1～6月期業績(未監査)は、業務利益が前年同期比+15.8％増の15兆9437億VNDへと順調に伸びた。このうち、利息関連収支が同+12.8％増の12兆4608億VNDへと順調に増加し、全体の78.2％に寄与した。一方、サービス業務収支は同▲17.4％減の1兆4315億VNDに減少し、同9.0％を占めた。事業費用が前年同期比▲0.4％減の4兆9928億VNDに微減した。コスト・インカム・レシオ(CIR)も前年同期の36.4％から31.3％へと大きく改善した。税引前利益が前年同期比+10.6％増の9兆9889億VNDへと順調に増加し、年間計画の50％だった。税引後利益は同+10.7％増の8兆VNDへと順調に伸び、1株当たり利益(EPS)は2021 VNDだった。 2023年6月末時点の総資産は前年末比+3.8％増の631兆VND、このうち、顧客への貸出金は同+4.9％増の429兆VNDへと小幅に伸び、総資産全体の68.0％を占めた。　一方、顧客からの預金は同+4.5％増の432兆VNDの小幅な増加だった。　これにより、預金に対する貸出金の比率は99.2％の高水準となっている。

同時点の不良債権比率(NPL)は前年末の0.7％から1.1％へと著しく上昇したものの、引き続き銀行業界では低いほうとなっている。

2023年業績見通しは、業務利益が前年比+15.9％増の33兆3790億VND、税引後利益が同+14.7％増の15兆6950億VND、EPSが3848 VNDと見込まれる。根拠は以下の通り。

・2023年末時点での顧客からの預金が前年末比+15.9％増。

・顧客への貸出金が同+12.5％増。

・預金に対する貸出金の比率が前年末の98.8%％から95.8％に低下。

・同年の利息関連収支が前年比+15.6％増の27兆2090億VNDへと順調に伸びる。

・純金利マージン(NIM)が前年の4.4％から4.3％に若干低下。

・事業費用が同▲5.1％減、CIRが前年の40.3％から33.0％に改善。

IV. 現金配当の推移

	VND/株
2019年分	0
2020年分	0
2021年分	0
2022年分	1,000

科目	2020年末	2021年末	2022年末	2023年6月末（未監査）
現金および貴金属類	6,967,918	7,509,877	8,460,892	5,983,591
ベトナム国家銀行への預金	16,616,798	32,349,574	13,657,531	11,514,014
他の金融機関への預金・融資	31,671,245	49,818,776	85,971,313	89,763,275
他の金融機関への預金	8,360,129	6,105,546	3,682,551	830,814
売買用証券	6,167,917	11,259,731	1,131,327	1,068,921
顧客への貸出金	308,528,625	356,050,950	408,856,508	429,058,305
貸倒引当金控除前の顧客への貸出金	311,478,989	361,912,538	413,706,244	434,031,946
貸倒引当金	2,950,364	5,861,588	4,849,736	4,973,641
金融派生商品及びその他の金融資産	54,473	226,545	100,072	114,028
証券投資	63,399,011	59,474,604	75,534,794	79,112,752
その他の企業投資	99,489	171,925	146,814	146,321
固定資産	3,782,753	3,762,548	3,981,376	4,292,448
不動産投資	348,778	216,027	177,005	177,005
その他資産	6,893,097	6,929,387	9,857,553	9,662,509
資産の部合計	444,530,104	527,769,944	607,875,185	630,893,169
負債の部合計	409,081,941	482,869,035	549,436,522	568,025,987
政府及び中央銀行からの借入金	0	0	505,876	2,921
他の金融機関からの預金及び借入金	23,875,242	54,393,939	67,840,840	68,957,497
他の金融機関からの預金	15,081,349	41,380,571	60,002,732	65,531,668
預金	353,195,838	379,920,669	413,952,789	432,410,465
金融派生商品及びその他の債務	0	0	0	0
受託金	116,705	86,066	60,188	49,182
有価証券（社債等）	22,049,697	30,547,883	44,304,367	44,657,505
その他負債	9,844,459	17,920,478	22,772,462	21,948,417
株主資本	35,448,163	44,900,909	58,438,663	62,867,182
資本金	21,615,585	27,019,481	33,774,351	38,840,504
資本剰余金	271,779	271,779	271,779	271,779
その他の資金	0	0	0	0
金庫株	0	0	0	0
諸準備金	5,741,759	7,164,297	9,220,125	9,220,107
為替評価差異	0	0	0	▲44,922
資産再評価差異	0	0	0	0
利益剰余金	7,819,040	10,445,352	15,172,408	14,579,714
建設投資積立金	0	0	0	0
少数株主持分	0	0	0	0
負債・資本・少数株主持分合計	444,530,104	527,769,944	607,875,185	630,893,169

科目