サイゴン・ツーリスト運送[STT](Saigon Tourist Transport)の取締役で大口株主でもあるグエン・バン・ホン氏が同社の破産を申し立てた裁判の控訴審で、ホーチミン市上級裁判所は一審判決を支持し、破産申立を却下した。
ホン取締役(2015~2020年任期)はSTT株21.8%を保有している。STTは未上場公開株取引市場(UPCoM)に店頭公開しているため、UPCoMでの資金回収が可能だが、同氏は取締役会や株主総会での交渉を経ず、STTが債務超過で支払い能力が失われたとしてSTTの破産を申請していた。
ホーチミン市人民裁判所はこれに先立つ2020年6月、審査の上で同氏が挙げた理由を不適切として破産申立を却下した。
この破産申請によりSTTの事業は困難に陥った。特に空港でのタクシーサービスが大きな被害を受け、空港当局に事情を説明するため1か月間のサービス停止を余儀なくされたという。
STTは輸送、旅行、セキュリティサービス、海外への労働者派遣などを手掛けており、2004年に株式会社化、2011年にはホーチミン証券取引所(HSX)への上場を果たした。しかし、同社は社内紛争により2012年から赤字に陥り、2018年7月に強制的に上場廃止となった。
2020年の業績は、売上高が前年比▲30.3%減の246億VND(約1.17億円)に減少した。税引後利益は▲36億VND(約1700万円)と引き続き赤字を計上したが、赤字額は前年の▲133億VND(約6300万円)から大きく縮小した。なお、2020年末時点での累積赤字額は▲969億VND(約4.6億円)となっている。